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8役を演じ分ける日本人バトントワラー

影山雄成のバックステージ・ファイル

劇中の冒頭、王宮の宴の場面で京劇を取り入れた演技が劇中劇という設定で披露されるが、その演技の中心を担うレディ・オフィサー役を日本人の彼女が演じることになったのだ。
京劇という伝統芸能だからこそ、これまでは同役を中国語圏以外の出演者が担うのはご法度とされてきた。

レディ・オフィサー役(中央)
Photo:Koki Sato

両端に房飾りのある115センチの槍を両手で回して舞いながら、5人の男性キャストが次々と投げてくる170センチの槍を脚で蹴り返していく。
時には共演者に持ち上げられるリフトも入れながら蹴り返す同演技は相当ハードルが高い。
同役の人手が足りなかったこともあり、バトンを扱いバランス感覚に長けた人材なら技を習得できると踏んだ上層部が去年8月に彼女に挑戦を打診したのだ。
「本当は競技などでの勝負も苦手なのですが、自分自身にだけは負けたくないので納得できるまで練習はします」と槍を蹴る両足に痣を増やしながらもトレーニングを重ねた。

Photo:Koki Sato

レディ・オフィサー役の初出演となった公演ではすべての槍をミスなく蹴り返す。演技終了直後、沸いたのは観客だけではなかった。ステージ上の共演者も我を忘れ両手をあげて拍手する。
「ARISA(アリサ)!」、その一人が思わず叫んだ。
同役で舞台に立つこととなり、高見亜梨彩が担うのは合計8役、メイクの種類は総勢80人の出演者の中で一番多くなった。

45本の筆を使い分けてのメイク
Photo:Koki Sato

幼いころから持ちなれたバトンという棒だけではなく、槍や45本のメイク用の筆という棒さえも使い分けて日々の本番に挑む。
プログラムにある彼女のプロフィルにまた新たな役名が加えられることとなった。

Photo:Chris Clinton
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書いた人:影山雄成(KAGEYAMA,YUSEI)

影山雄成(KAGEYAMA,YUSEI)

演劇ジャーナリスト。 延岡市出身、ニューヨーク在住。 ニューヨークの劇場街ブロードウェイを中心に演劇ジャーナリストとして活躍。アメリカの演劇作品を対象にした「ドラマ・デスク賞」の審査・選考委員。夕刊デイリー新聞で「影山雄成のバックステージ・ファイル」を連載中。

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延岡バックステージ
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