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夢と魔法の国が切り開くブロードウェイ

影山雄成のバックステージ・ファイル

寄稿/影山雄成

2021年の秋になり多数のミュージカルやストレートプレイ(芝居)が一挙に上演を再開、本格的な復活を遂げたニューヨークの劇場街ブロードウェイ。
しかし、そこに至るまでの道程は平坦なものではなく、様々な段階を踏んだものとなった。

2020年の3月12日に閉鎖されたブロードウェイを元通りに再稼働させるにあたっての最大の難関となったのは、5万1000人の舞台俳優たちを抱える労働組合と雇用条件で合意すること。

ブロードウェイでミュージカルやストレートプレイの舞台に出演するためには、舞台俳優組合に所属していることが絶対的な条件となっている。
そんな組合に所属する俳優たちは、劇場の閉鎖によって活躍の場がなくなったことで、生活苦に苛まれ医療保険を失い、医者にさえかかれない人々が続出していた。
それもあり、組合は身内を懸命に守るために、再開に際して高額な報酬などハードルの高い雇用条件を興行主であるプロデューサーに突き付けていたのだ。

両者の主張は平行線をたどり、当事者となる舞台俳優たちと劇場そのものは再開の準備が整ったにもかかわらず、ブロードウェイが本格的な再開に踏み出せずにいたのである。

Photo:Mike Leonard
『LIVE AT THE NEW AM』

こうした中、突破口を開いたのが夢と魔法の国を謳うディズニー。
いったん、舞台俳優組合に所属する人材を雇用した作品が上演に漕ぎ着ければエンジンが点火され、他の舞台も躊躇することなくスムーズに再開に踏み出せると睨んだのだ。

ディズニーが切り開いた道により、9月の大々的なブロードウェイ復活が一気に現実味を増した。

1994年にミュージカル『美女と野獣』でブロードウェイ進出を果たしたディズニーは、パンデミックが始まり劇場が閉鎖になった際に3演目を同時上演させるまでに成長していた。
そんなディズニーが、再開を足踏みしていた劇場街を勇気づけるために昨年の7月下旬に考案した企画が、ブロードウェイの拠点として所有するニュー・アムステルダム劇場にて4日間限定で行う特別コンサート『ライブ・アット・ザ・ニュー・アム』。

ホームグラウンドである“ニュー・アムステルダム”の劇場名の略称をタイトルに冠し、これまでに世に送り出してきた数々のディズニー・ミュージカルの中から31曲を披露するという内容だ。

お馴染みのミュージカル『ライオンキング』や『リトルマーメイド』、そして『アナと雪の女王』といった11作品からの名曲が次々と歌われていくファンへの大盤振る舞いのステージ。

家族客にとっても親しみのある内容で、長期にわたって観劇をしていなかった観客を劇場に呼び戻しやすいのが最大のメリットだ。
同時に、閉鎖により長らく仕事を離れていた劇場のスタッフなどを再び現場に慣れさせるための絶好の機会にもなる。チケット価格を79~99ドルと従来のブロードウェイ・ミュージカルに比べて安価に設定できたのも大掛かりな舞台装置や大勢のスタッフを必要としないコンサートだから。

さらにはチケット2000枚を医療関係者に無料で配布し、収益の一部をパンデミック中は貧困に喘ぐエンターテイナーを支えてきた基金アクターズ・ファンドに寄付、チャリティー目的も兼ねる。

Photo:Mike Leonard
左から アシュリー・ブラウン、マイケル・ジェームズ・スコット、ジョシュ・ストリックランド、キシー・シモンズ

出演する合計4人は、もちろん全員が舞台俳優組合に所属、過去にディズニー・ミュージカルで主役を演じた経験を持つ人材を起用した。
女性陣は、ミュージカル『メリー・ポピンズ』のブロードウェイ初演でタイトルロールを演じたアシュリー・ブラウンと、『ライオンキング』のナラ役で最多出演記録を持つキシー・シモンズの2人。
そして『アラジン』のジーニー役で定評のあるマイケル・ジェームズ・スコット、ミュージカル『ターザン』の初演でタイトルロールを演じたジョシュ・ストリックランドの男性陣2人が彼女たちをサポートする。
この4人が揃ってディズニー作品の楽曲を披露していく同様のライブ・コンサートは、パンデミック中もフロリダのディズニー・リゾートで行われており、今回はそれらを下敷きにしての豪華版。

Photo:Mike Leonard

舞台俳優組合に所属する逸材が顔を揃える同コンサートで劇場街そのものを景気づけ、ミュージカルやストレートプレイが上演されるための架け橋にするという計画は、資金源が豊富なディズニーだからこそ担えた役割だ。

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書いた人:影山雄成(KAGEYAMA,YUSEI)

影山雄成(KAGEYAMA,YUSEI)

演劇ジャーナリスト。 延岡市出身、ニューヨーク在住。 ニューヨークの劇場街ブロードウェイを中心に演劇ジャーナリストとして活躍。アメリカの演劇作品を対象にした「ドラマ・デスク賞」の審査・選考委員。夕刊デイリー新聞で「影山雄成のバックステージ・ファイル」を連載中。

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延岡バックステージ
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