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15.スティーヴン・シュワルツに沸く冬

影山雄成のバックステージ・ファイル

寄稿/影山雄成

この冬のニューヨークのエンターテインメント界を席巻したのは、作詞・作曲家スティーヴン・シュワルツ。
アカデミー賞、グラミー賞、ゴールデングローブ賞、そしてトニー賞に輝いてきた77歳の逸材による映画とミュージカルが出揃い、注目を集めた。

Stephen Schwartz

スティーヴン・シュワルツは、1970年代にミュージカル『ピピン』や『ゴッドスペル』の作詞・作曲で演劇界にその名を馳せる。同時期にはこの2作品に加え、ミュージカル『マジック・ショー』も大当たり、劇場街ブロードウェイで初めて手掛けた3作品の同時上演を実現した作詞・作曲家となった。

とはいえ日本では、彼と同じ1948年の3月生まれとなるアンドリュー・ロイド=ウェバーが、劇団四季によるミュージカル『キャッツ』や『オペラ座の怪人』の全国でのロングラン公演もあり、より早く知名度を高めていく。
そんな中、スティーヴン・シュワルツは1990年代にディズニー映画の作詞を立て続けに担当、『ポカホンタス』でアカデミー賞やグラミー賞などを総なめにし、一挙に存在感を高めた。
そして彼が作詞・作曲を手掛けたミュージカル『ウィキッド』が2003年にブロードウェイで開幕、その名声を不動のものとしたのだ。

『Wicked』

ミュージカル『ウィキッド』は、『オズの魔法使い』の前日譚を描く内容。竜巻によって家ごとカンザスの田舎からオズの国に飛ばされた少女ドロシーが冒険の旅に出る前から始まるのがその物語となる。

A Look Inside Oz | WICKED the Musical
2018年トレーラー映像

オズの国を舞台に、緑色の肌と魔法の力を持って生まれたことから人々に疎外されて育ったエルファバと、楽天的なブロンドの美女グリンダの2人の軋轢と友情に焦点を当てていく。
どういった経緯で、純粋でありながらも肌の色からエルファバが「西の悪い魔女」として人々から恐れられ、したたかなグリンダが「南の良い魔女」として崇められるようになったかを振り返るのだ。

Photo:Joan Marcus

2025年の末にかけて、ブロードウェイでロングラン22年を迎えて間もない同作品が様々なメディアで取り上げられ、大評判となった。去る11月21日にミュージカルの映画版の最終章となる『ウィキッド 永遠の約束』の公開を控え、大規模な宣伝活動が展開されたからである。
昨年公開された第一作目がミュージカル映画として過去最高の興行収入を記録、第二作目でその記録を塗り替えようという意気込み。

映画『ウィキッド 永遠の約束』本予告
日本では2026年3月6日より全国ロードショー

誤解により悪の魔女として孤軍奮闘するエルファバと、オズの国の人々から慕われるグリンダの互いのことを思いやる密かな絆は映画最終章の要となり、宣伝活動はそれを大いに利用した形となった。
そもそも、同作品が長年にわたって支持されてきた人気の秘訣は2人の女性のすれ違いを経て築かれる友愛をテーマにしているから。永遠の親友であることを誓い合う2人に自分たちを照らし合わせる多くのファンを魅了してきた。
今回は通常の玩具やアパレル、コスメ以外にも、比較的に女性の利用が多い日用品とのタイアップが目立つ。“エルファバ=緑”、“グリンダ=ピンク”という配色においてのタイアップ商品が販売されたのだ。

Get Scent to Oz, In Theaters November 21 | Gain
衣料用洗剤とタイアップ

消臭・芳香剤のファブリーズのエルファバとグリンダをイメージした2種類の香りの商品を筆頭に、魔法の杖をイメージしたクイックルワイパー、台所用洗剤、衣料用洗剤などが商品化されCMが繰り返し放送された。
さらにはトヨタ自動車までがタイアップ、レクサスの緑の高級SUVに映画の監督の一家三人が乗車し、オズの国に出かけるという流れの家族向けのCMを制作し盛り上げる。

LEXUS AND UNIVERSAL PICTURES’ WICKED: FOR GOOD REUNITE FOR MOVIE FANS TO “EXPERIENCE OZMAZING” - Lexus USA Newsroom
PLANO, Texas (Oct. 13, 2025) – Last year, Universal Pictures’ Wicked captivated ...

レクサスとユニバーサル・ピクチャーズの『ウィキッド 永遠の約束』が再びタッグを組み、映画ファンに「驚異の体験」を
2024.10.13

https://pressroom.lexus.com/より

こうしたタイアップとは別に、11月上旬に放送された2時間におよぶ特別番組『ウィキッド・スペシャル:忘れられない一夜』も大きな話題作りの一環となった。映画の出演者たちが主だったミュージカルナンバーを次々と披露するという豪華な内容。日本ではAmazon Prime Videoで配信され、WOWOWで放送された同番組が、熱狂的なファン達を魅了した。

中でも主役2人が永遠の友情を誓い合い、同時に別れを告げる今回の映画の副題にも採用されたタイトルの楽曲は、ブロードウェイの上演劇場のステージの上でスティーヴン・シュワルツがピアノを弾き、舞台のオリジナル・キャストと映画版のエルファバとグリンダの4人が歌うという企画。原作舞台と映画版の双方の宣伝に努めた。

Four Witches. For Good.
WICKED THE Musical公式YouTube

昨年の映画第一作目の成功もあり、舞台版の興行収入は週200万ドル、日本円に換算して3億1千万円を突破することも珍しくなくなっている。2025年のクリスマスの週には400万ドル超の売上を達成、今後は更なる需要が見込まれチケット代が高騰すると予想されるのだ。

この2時間番組の合間に流されたCMの多くは『ウィキッド』とのタイアップ商品のものが目立ったが、その中に別のミュージカルの宣伝も含まれていた。

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待望の新作ミュージカル
スティーヴン・シュワルツと、『ウィキッド』初演でグリンダ役を演じた女優クリスティン・チェノウェスが再びタッグ。

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書いた人:影山雄成(KAGEYAMA,YUSEI)

影山雄成(KAGEYAMA,YUSEI)

演劇ジャーナリスト。 延岡市出身、ニューヨーク在住。 ニューヨークの劇場街ブロードウェイを中心に演劇ジャーナリストとして活躍。アメリカの演劇作品を対象にした「ドラマ・デスク賞」の審査・選考委員。夕刊デイリー新聞で「影山雄成のバックステージ・ファイル」を連載中。

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延岡バックステージ
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