8役を演じ分ける日本人バトントワラー

影山雄成のバックステージ・ファイル
Photo:Koki Sato

高見亜梨彩

高見亜梨彩
Photo:Chris Clinton

バトントワラーの高見亜梨彩が出演するカナダのサーカス団シルク・ドゥ・ソレイユの舞台のプログラムにある彼女の履歴や役割の紹介欄は長い。
アンダースタディー(交代役)を務める役名のほかにも、「アクロバット担当/パペティア(人形遣い)担当」などと記されている。
彼女が出演するのはアメリカのラスベガスで上演されている同サーカス団の豪華演目『KA』。
2005年に初演された同作品の舞台に彼女が初めて立ったのは9年前のこと。
棒を巧みに操るバトントワーリング一筋でキャリアを積んできた彼女は、アメリカのショウビジネスの世界に飛び込み、次々と新たなジャンルを開拓していった。
大阪府出身の高見亜梨彩は2歳からバトンを習い始め、世界大会での優勝経験も持つ。
競技人生に区切りをつけ指導や振付に従事していた2007年、日本で開催されたシルク・ドゥ・ソレイユのオーディションに参加。
その場で伝えられた結果は合格だったが、それは同サーカス団の人材バンクへの登録のみを意味し、出演等が決まったわけではなかった。
オーディションそのものを忘れかけていた2009年の夏、携帯電話に連絡が来た。
出演のオファーがあった『KA』にはサーカス作品としては珍しく物語がある。

Photo:Yusuke Funaki

アジア色の濃い架空の世界を舞台に、二国間の争いから和睦までの歩みが言葉を使わずアクロバットなどの演技のみで叙事詩のように描かれるのが特徴。
劇中、敵国の王子に密かに想いを寄せる王女が2人の絆であるフルートをバトンに見立てて演技をする。
このダイアナ役のアンダースタディー(交代役)として、彼女に白羽の矢が立ったのだ。

Photo:Yusuke Funaki

渡米しラスベガスへと向かったのは2カ月後のこと。
1憶6500万ドル、日本円に換算して170億円超の製作費がつぎ込まれた『KA』は、自由自在に回転する総重量127トンの巨大ステージなどの舞台装置が目玉となる。
現地入りをし、まずは複雑な舞台機構に慣れることから準備は始まった。
危険を伴うステージのため、5メートルの高さからエアバッグに飛び降りる訓練もあったが、高所恐怖症で絶叫マシンも苦手なのだという彼女にとっては最初の難関。
足がすくみ、飛び降りるまでに30分間スタッフを待たせることになったという。

彼女が担う役割は王女ダイアナ役のアンダースタディー。
これは決められた日にのみ同役で舞台に立つということだ。つまり連日の公演で同役を演じるわけではなく、他の公演では別の役柄もこなす義務が課せられる。
ダイアナ以外の役ではサーカス作品であるだけに、アクロバットなどこれまでに経験したことのない技を強いられることとなった。

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