ブロードウェイでの開幕を数日後に控えてプレビュー公演を重ねていたミュージカル『クイーン・オブ・ベルサイユ』。
同作品はスティーヴン・シュワルツと、『ウィキッド』初演でグリンダ役を演じた女優クリスティン・チェノウェスが再びタッグを組んだ待望の新作ミュージカル。

Photo:Julieta Cervantes
2012年のドキュメンタリー映画『クイーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落』を原作とする同作品は、“タイムシェアの王”として財を成したウェイストゲートリゾート社の創始者の妻ジャッキー・シーゲルの半生を描くもの。
1966年生まれのジャッキー・シーゲルの大学時代に遡り、IBM社への就職と退職、一度目の結婚の失敗を経てモデルに転身するところから物語は始まる。その美貌を武器に30歳年上のデヴィッド・シーゲルと出会い、結婚するまでの道程が順番に描かれていく。こうして、大富豪の夫婦は新婚旅行で訪れたフランスでベルサイユ宮殿に惚れ込み、それを模したアメリカで最も規模の大きい大邸宅の建設に着手する。




ところが、2008年にリーマンショックが発生し浪費家だったジャッキー・シーゲルの人生は暗転、ほとんどの資産を手放さざるを得なくなってしまう。しかし、後に政府の緩和政策もありシーゲル家は凍結されていた資産を再び手にし、ジャッキー・シーゲルは念願だったベルサイユ宮殿の完成を再び目指すのだ。
金銭的に裕福な生活に固執することを望んではいなかった長女が再び浪費家になった母親に絶望、薬物の過剰摂取によって死亡しても尚、ジャッキー・シーゲルは更なる向上心に自分の未来を託していく。




同舞台では、物語が要所ようしょで17世紀と18世紀のベルサイユ宮殿へとフラッシュバック、贅沢極まりない生活を送っていた貴族たちがフランス革命でギロチン送りとなり、没落していくまでの歴史に触れられるのが特徴。
その一方でジャッキー・シーゲルは、「アメリカの貴族になる」という決意の歌詞を何度も楽曲の中で繰り返し、それとは対照的な彼女の野心が強調される。滅亡したフランス王国の呪縛に囚われたのがシーゲル家のベルサイユ宮殿建設と一家の不幸なのだというメッセージを提示していく。
The Queen of Versailles on Broadway公式YouTube
ブロードウェイで22年ぶりに開幕したスティーヴン・シュワルツ作詞・作曲の新作とだけあり、当然大きな期待が寄せられ、最有力のNYタイムズ紙は“おとぎ話”なのだと大絶賛し、劇評家の推奨作品にまで選出した。
しかし、世間の同作品に対しての受け止め方は一筋縄ではいかず、時世を鑑み多くの観客が不快感を抱く。つまり、アメリカで貴族になることを夢見る女性を美化する話に、「王はいらない」と叫ばれた現政権と大統領への抗議活動などを照らし合わせ、不謹慎だといった理由で拒絶、待望の新作は残念ながら不発に終わった。
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『ベイカーズ・ワイフ』
スティーヴン・シュワルツが1976年に手掛けた作品のリバイバル公演となるミュージカル
