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17.ハワイのエンターテインメント革命 神話や文化を重んじる楽園のサーカス

影山雄成のバックステージ・ファイル

寄稿/影山雄成

『‘Auana(アウアナ)』
Photo:Courtesy of Cirque du Soleil ‘Auana

南国のビーチリゾートで出合うのが難しいのは、芸術性に富んだライブエンターテインメント。その主たる理由とされるのが、海水浴とグルメ、ショッピング、そしてリゾート気分を盛り上げるレジャーやレクリエーションに偏りがちな観光客の需要となる。
日本人にとって海外旅行の代名詞であり続ける憧れの地で、円安と物価高の波にのまれてさえ人気の高いハワイも例外とは言えない。

そんな中、この常夏の楽園に新風を吹き込んだのが、日本でもお馴染みのカナダのサーカス集団シルク・ドゥ・ソレイユ。島の観光地の中でも群を抜いて人々が集中するオアフ島の繁華街ワイキキで、アーティスティックなステージの追求のみならず、地元に伝わる神話や伝統を徹底して重んじる演目を生み出した。
常設劇場でのロングラン公演を重ねる演目『アウアナ』が、ビーチリゾートにおける新たな可能性を提案している。

『アウアナ』オフィシャルトレーラー/Youtube

ハワイで今回のような芸術性を売りにしたライブエンターテインメントが制作されるのは初めてのことではない。マウイ島ではカナダのモントリオールからチームを招聘、ハワイの創世神話とその歴史をアーティスティックなサーカスの要素を取り入れて描くショー『ウラレナ』が、1999年からおよそ20年に及ぶロングランを成功させた。

『’Ulalena(ウラレナ)』2014年プロモーション映像/Youtube

オアフ島でも同じ制作陣が再集結した意欲作『ワイキキ・ネイ』が、2008年に幕を開ける。
アクロバットやハワイの舞踊フラ、そして豪華な舞台美術を以って、ワイキキという観光地の道のりを追憶して現在と照らし合わせ、そこに島の文化や歴史を絡めていく内容のこの壮大な舞台プロジェクトには、2千2百万ドルもの巨費が投じられた。

『Waikiki Nei(ワイキキ・ネイ)』
All Photos:Martin J. Dignard/John Demello

ショッピングセンターの最上階に増築する形で客席可変式劇場を建設、ショーの終演後には座席を一挙に折りたたみフラットな空間を実現、クラブとして稼働することも可能で、島のナイトライフの大改革になることさえも期待されたが、わずか数カ月で上演打ち切りの憂き目にあってしまう。
観光客が上質なステージを求めてハワイを訪れるのではないという現実が浮き彫りになったのだ。

『ワイキキ・ネイ』終演後のクラブ
Photo:David Croxford

最終的にオアフ島で生き残ることができたライブエンターテインメントといえば、現地の言葉で“宴”を意味するルアウと呼ばれる類のもの。
それらは郷土料理を中心とした食事を提供しつつ、ハワイのフラに特化せずポリネシア諸島全般の伝統芸能を順番に披露し、南国気分を高めるのが主目的。

オアフ島の観光ツアー ルアウの様子/Youtube

ポリネシア諸島を舞台にした青年の冒険を描いたストーリー仕立てのものや、ディズニーによるハワイの人々のルーツに焦点を当て、神話の要素を取り入れた試みもあったが、基本的なルアウという観光客を相手にした概念と骨子は払拭できずにいた。

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シルク・ドゥ・ソレイユ『アウアナ』
ハワイの文化や伝承、そして島の人々に敬意を表しつつ、エンターテインメント性の高い新感覚のサーカス

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書いた人:影山雄成(KAGEYAMA,YUSEI)

影山雄成(KAGEYAMA,YUSEI)

演劇ジャーナリスト。 延岡市出身、ニューヨーク在住。 ニューヨークの劇場街ブロードウェイを中心に演劇ジャーナリストとして活躍。アメリカの演劇作品を対象にした「ドラマ・デスク賞」の審査・選考委員。夕刊デイリー新聞で「影山雄成のバックステージ・ファイル」を連載中。

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